経営における意思決定とは

こんにちは。税理士の堀です。
今回は、経営における意思決定の際に気をつけるべき事をお話したいと思います。

私が思う、経営における意思決定の際に気をつけていただきたいことは3つあります。

1つ目は、その決定に私利私欲が入ってしまっていないか。
自分の私的思惑を絡めた事業提案は危険だと思います。

2つ目は、自らの提案に惚れ込みすぎていないか。
これは相談に来られる方にも結構おられるんですけども、惚れ込みすぎて提案のメリットを必要以上に強調しておられてデメリットを見失っておられる。それは問題だと思います。

次が一番言いたいことなんですけれども
3つ目、損失回避性にとらわれていないか。
多くの人にとって損したものは、得したために得たものより大きい。
なので、損失を回避したいと思う気持ちが数字の経営に、経営者をはしらせますし結局、お客様を喜ばせて売上を増やしたいという気持ちに勝ってしまいます。
多くの企業がビジネスチャンスを失うのは、まさに損失回避性という特徴が
あるからなのです。

例えば、Aという株とBという株をそれぞれ100万円ずつ買ったとします。
ある瞬間にAの株が120万に値上がりし、Bの株が80万に値下がりした。
多くの人はA株(120万円)を売りますし、B株は売らないです。
結局、得している株は売り急ぐんですけれど、損している株は売り遅れるんです。

本当に投資をしている方からしたら、そんなことで売り買いをするなんてとんでもない話かもしれませんが、一般の人はそういう売り買いをしてしまう。

なぜかというと、Aという株はもともと100万だったわけですよね。
それがある瞬間120万になった。
これを放っておくとまた100万円になるかもしれない。
そうすると、100万円に戻った時にあの120万の時に売っておけば良かった
と、すごく嫌な気持ちになってしまいますよね。
その嫌な気持ちになりたくないから売り急ぐんです。

逆にBの株は今売ると20万の損が確定してしまいます。
すごく嫌な気持ちになるので、先送りにしてしまうんですね。

こんな風に、人の判断は具体的な判断があるわけではなくて、
気持ち「快」「不快」という感情にすごく影響されている。
問題なのは「快」「不快」という感情に自分の判断が影響されているということを本人自身が気づいていない、認識していないということなんです。

例えばさっきの株の話でもそうですが120万円の株を売っているときも
自分の「快」「不快」、いわゆる損失回避性に影響されて売っているのだ
ということに気づいていないんですね。

人は殆どのことを無意識に行います。
これはフロイトが提唱していますよね。
人の意思決定に大きな影響を与える感情が、実は無意識のうちに自分にとって
心地いいこと、不安を取り除くこと、に向けて行動してしまうのです。

例えば、相手に欠点を指摘されて自分を守るために相手に八つ当たりする事って
ありますよね。
それは相手に不快な感情を起こされてしまって、それをなくすために
不快な状態を取り除こうとして相手を攻撃しているという事なのです。
これも無意識にやっていますよね。

実は、人の意思決定はそんなに単純なことではない。ということなのです。

「そんなことくらい、今更言われなくても分かってるよ。」と思われるかも
しれないですが、みんながそれを知っているにも関わらず、お客様、従業員の感情を無視して、無理矢理経営を数字化することで安心してしまう。
そんな既存の数字の経営ではダメなんです。

お客様を満足させるには、お客様がどういう時に気持ち良くなるのか、
どういう時に不快になるのかを知らなければなりません。

ちなみに、私の次男が大学生の時に飲み屋でアルバイトをしていた際に、経営者の方にある事を相談したんです。
生ビールって上から少し下がった所にマークがあってそこまでしか入ってないですよね。
上は泡ばっかりなんですけど、それをギリギリまで入れていいか、と相談したところ入れていいと言われたので、生ビールをギリギリまで入れてお客様の所に持って行ったんですね。
私なんかもそうなんですけど、呑み助は泡が少ないと喜ぶんですよね。
結果どうなったかというと、常連さんが増えて、私の次男が居るときは来るよっていう人が増えて、売上が増えていったんですね。

結局数字の経営をしている人っていうのは、泡の量をもっと増やして、それで経費が削減されるかもしないけれど、結果お客様の不快を招いて売上が減っていく。そんなことなんです。

そういう意味で自分たちのビジネスにどういう風につながるのか。
経営にどういう風に活用していくのか。
それを考えて経営の意思決定をしていくことが経営者の手腕の見せ所だと私は思います。

ABOUTこの記事をかいた人

大阪府出身、大阪府立大学卒。一般企業勤務後、父親が経営する会社に後継者候補として転職するも、父親が税理士のアドバイスに従って経営改善をした結果、状況がみるみる悪化していくのを目の当たりにし、会社の解散を提案。 経営税理士が経営に関しては素人と知って愕然とし、必死で会社を支えている社長を経営面からサポートできる税理士を目指し、税理士資格を取得。 その後、税理士として多くの経営者と付き合う中で、「成功する社長の考え方」を知る。 また、ランチェスター経営の第一人者、竹田陽一氏に師事。「大企業にできない中小企業ならではの戦略」を学ぶ。 現在は「中小企業の社長と従業員とその家族が幸せになれば、世の中が幸せになる」を合言葉に、クライアントの売り上げ向上と税金対策に携わっている。